フォークソングの時代が蘇る。南正人さんの演奏会レポート

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11月25日(土)、アーティスティックスペース LaLaLaでフォークシンガー、南正人さんの演奏会が行われたので、ちょっとお邪魔してきました。

開演時間の19時になると、席を埋め尽くすお客さん達。

古くからのファンの方が多いようで、昔の思い出話に花を咲かせています。

南正人とは

1944年3月3日、東京・阿佐ヶ谷生まれのフォーク・シンガー。

1960年代、高田渡、遠藤賢司、真崎義博らと「アゴラ」という日本語のフォーク・ソングのチームに参加し、東京での音楽活動をスタートしました。

1971年には、細野晴臣、水谷孝をバックにファーストアルバム「回帰線」発表。

この作品は泉谷しげるにも影響を与えたそうです。

そして73歳となった現在もギター片手に全国各地を飛び回る、その筋では有名なミュージシャン。

「紫陽花」、「ローリングストーン」、「こんなに遠くまで」、「あたしのブギウギ」など、数々の名曲を残しています。

蘇る名曲と当時の記憶

椅子に腰掛け、年季の入ったギターを構える南さん。

「曲のリクエストがあったら言ってくださいね。」

集まった人に語りかけながら、ゆっくりと演奏を始めます。

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セットリストはしっかり決めていなさそうな、ラフな雰囲気。

ギターの音が、部屋の空気を緩めるかのように優しく響きます。

膨よかな指先で紡がれるその音は、角がなく、まるで6本の弦がすべて一つにまとまったかのよう。

会場全体をフォークソングが全盛だった1960年代のムードに変えていきます。

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数曲歌い終えると、1人のゲストをステージに呼び入れる南さん。

それは、「あたしのブギウギ」の作詞を手がけた、成田ヒロシさんでした。

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詩人、画家、家具作家、など、多くの肩書きを持つ成田さんと南さんは古くからの知り合いで、共に激動の時代を生き抜いてきた仲間。

そして、そんな2人が生み出した「あたしのブギウギ」は、その後浅川マキさんにカバーされ、さらに最近では、伊東妙子さんと篠田智仁さんによるギターヴォーカル、ベースのデュオ「T字路s」にもカバーされる名曲です。

成田さんにマイクを譲り、脇のピアノに腰掛ける南さん。

南さんがピアノを演奏し始めると…

「ひとりぼっちがやりきれなくて、お酒飲んでほろほれろ…」

成田さんによる「あたしのブギウギ」の詩の朗読が始まりました。

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不器用なピアノにのせて、ゆっくりと作詞家本人の言葉で紡がれる歌詞。

歌とはまた違ったリズムで、時にはまるで独り言のようにこじんまりと、時には語りかけるかのように、成田さん自身の“ブギウギ”が語られていきます。

その言葉に聞きいるように静まり返り、優しい眼差しで見つめるお客さん。

「あたしの、ブギウギ…」

最後の歌詞を読み終えてうつむく成田さんの哀愁たるや。

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その後、南さんにマイクが戻されると、朗読が歌に変わり、先ほどまでとは違った高揚感が会場に満ちていきます。

南さんと一緒に歌詞を口ずさむお客さん。

編集部もカメラを向けながら、作詞家から歌い手に詩が引き継がれる瞬間を目撃し、胸に込み上げるものを感じました。

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二部構成で行われた演奏会。

荒っぽいけど繊細で、頼りないけど揺るぎない。

南さんの歌から、フォークソング全盛期に日本を生きた若者の、エネルギーや葛藤、哀愁など、さまざまなを側面を感じ取ることができた素敵な夜でした。

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●artistic studio LaLaLa
住所:立川市柴崎町4-3-2 LaLaLa
Facebook:https://www.facebook.com/lalala2015lalala/
電話番号:090-2564-3198

文・写真:しも
長野県安曇野市出身、立川在住のフリーライター。レゲエユニット「KaRaLi(カラリ)」でミュージシャンとしても活動中。
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